SESSAME代表 飯塚悦功
新年あけましておめでとうございます.

昨年末には,日韓両国が国交正常化50年の節目に,慰安婦問題について“最終的かつ不可逆的”な合意に達し,近年の緊張状態から脱しそうな情勢です.世界中どこに行っても,隣国はあまり仲が良くなく,経済的にはどうにも具合の悪いことです.わが国としては,日中韓の3国が,緊密な東アジア経済圏を形成することが望ましく,中国との緊張も早々に和らげたいものです.政治・軍事・宗教などとは適度な距離感を置いて,経済・産業における協力・分担を進めたいものです.

その経済・産業において,いまさらではありますが,ソフトウェアの重要性に疑問の余地はありません.ソフトウェアの生産高を正確に把握することは難しいのですが,せいぜいGDPの数%に過ぎません.しかしながら,その影響たるやその数倍に達すると言えます.多くの工業製品にはソフトウェアが組み込まれ,そのフィーチャー,信頼性を左右しています.社会システムも巨大なソフトウェアによって機能しています.

いまやソフトウェアは,産業インフラと言っても過言ではないでしょう.インフラの重要性は,その上で機能する経済・産業・社会の質と効率を左右してしまうことからも明らかです.近年の組込みシステムの巨大化,複雑化,それゆえの重要性の増大に鑑みるに,組込み技術者・管理者は,この職業が“profession”と呼ぶに相応しいことを再認識すべきです

“profession”を辞書で引いてみて下さい.知的職業(弁護士,医師など),(専門的)職業とあります.実は,これだけでは,この言葉の本当のニュアンスは分かりません.欧州では“profession”と呼ぶに相応しい職業が3つあると言われていました.それは,弁護士(法律家),医師,神父・牧師(聖職者)です.いずれも市民・社会に対して重大な影響(法,命,宗教)を与え,それゆえ治外法権的に守られ,通常は自治的懲戒制度を持つ職業です.平坦な意味で“知的”であり“専門的”というより,もっと重大な意味があるのです.

ソフトウェア技術者・管理者もまた,この意味での“profession”であると言われたら,こそばゆいですか.現代社会における組込みシステムの重大性ゆえに,組込み技術者・管理者は,こうした意識を持つべきではないでしょうか.

SESSAMEは,組込み技術者・管理者が,こうした意識を共有し,将来に向かって踏み出す場でありたいと思っています.そのために,SESSAMEは,設立以来,どのような人材を育てるべきか考え,時代の要請に応じて,様々なコンテンツを開発・提供してきました.議論をし,コンテンツを開発していく過程で,メンバ自身が成長していくことができました.開発されたコンテンツには,組込み技術者・管理者に期待される人物像を語り,自ら考え,積極的な参加を求めるものが数多くあります.

現代の経済社会は,残念なことに,組込み技術者・管理者のすべてを,上述したような意味での“profession”とまではとらえていません.それを意識した組織化ができているわけでもありません.SESSAMEは,人材育成のための技術的コンテンツの開発・提供ばかりでなく,そうした意識を醸成する場でもありたいと思っています.

このコミュニティに参加してみませんか.

SESSAMEは,昨年,「UML2.0状態マシン図設計セミナー〜ソフトウェアに変換可能な仕様書がきちんと書けるようになろう〜」の講師育成セミナーを開催しました.講師になることを目的として受講したり,自ら講師となってセミナを開催することにより,さらに理解も深まり,同士を増やすことができます.また,Open SESSAME Workshop 2015「組込みソフト開発『人材育成2015』」を開催し,多くの方と議論することができました.東京大学の藤田先生をお招きし,最新のテスト技術に関するセミナの連続開催も始まりました.

その他,SESSAMEの継続的活動ともいえる,各地の高等専門学校との連携によるセミナ開催,教材提供を,香川などで行いました.e-Learning教材も,引き続き提供しています.ET,ESECなどのイベントにも継続して出展しています.また,ETロボコンやWRO Japanといった,子供向け,若者向けのイベントも支援しています.

本年も,コミュニティに参加したい,何かを真剣に学びたいという方がいる限り,活動を進めてまいります.継続的に,演習やグループワークを重視したセミナの開発・実施などを行います.過去のセミナコンテンツを,皆さんが利用できるようにパッケージ化する試みも進めます.

また,これらの活動に多くの方が参加しやすい取り組みも行います.セミナコンテンツを開発したり,新たな企画を進めるには,多くの方との濃密なディスカッションが必要です.ディスカッションの場を広げていきたいと考えています.

一歩を踏み出した技術者・管理者の皆さんが,ただ受動的に情報を受け取るのみでなく,積極的に参加できるような場を提供できるよう活動を進めてまいります.

皆様のますますのご発展をお祈りするとともに,今後とも皆様のご支援を賜りたく,どうぞよろしくお願い申し上げます.

本年が良い年でありますように,心から祈念いたします.


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